英政府は10日、イングランドのサフォーク州で計画されている新規原子力発電所「サイズウェル(Sizewell)C」の建設プロジェクトに142億ポンドを追加拠出すると発表した。11日に公表を予定する支出見直し案の一環で、小型モジュール炉(SMR)の開発に25億ポンド超を投じることも決めている。
サイズウェルCの建設では1万人、SMR開発では最大3,000人の雇用創出が見込まれる。政府はサイズウェルCについて、「過去30年以上で初の英国主導での原発建設になる」と説明。サイズウェルCとSMRはいずれも2030年代に稼働を開始する見通しで、「原子力の黄金時代が訪れる」としている。
ロイター通信によると、政府はサイズウェルCのプロジェクトにすでに36億ポンドを投じており、今回を合わせると拠出額は総額178億ポンドに達する。プロジェクトは政府とフランス電力(EDF)が共同出資で進めており、昨年12月末時点の出資比率は政府が83.8%、EDFが16.2%だった。ただ、今回の追加投資によりEDFの出資比率はさらに低下することになる。
建設費は当初の試算では200億ポンドだったが、今年1月には400億ポンドに膨れ上がる見通しと報じられていた。
英国では最も新しい原発は1995年に運転を開始した「サイズウェルB」で、稼働中の原発は多くが老朽化している。現在建設が進んでいるのはサマセット州の「ヒンクリーポイント(Hinkley Point)C」のみで、こちらもインフレによるコスト拡大やプロジェクトの遅延が問題となっている。
政府は電力構成における原子力の比率を現在の約15%から50年までに25%に引き上げる目標を掲げる。
■ロールス・ロイスSMRを選定
政府はこの日、国内初のSMRプロジェクトの発注先に、英航空エンジン大手ロールス・ロイスのSMR開発事業子会社ロールス・ロイスSMRを選定したと発表した。競争入札の予備選考では、同社に加え、EDF、日立製作所と米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社であるGE日立ニュークリア・エナジー、米国の原子力企業ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)など計6社が選出されていた。[環境ニュース]
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