英国の競争審判所で23日、水道会社6社の下水放出問題を巡る集団訴訟の法定審問が始まった。各社の顧客を代表する原告は、水道最大手テムズ・ウオーターを含むこれら6社が下水放出による河川・海洋汚染の現状を当局に過少報告した結果、不当に高い水道料金の請求を許されたと訴えている。各社が敗訴すれば、顧客に総額数億ポンドの料金が払い戻される可能性もある。
この集団訴訟は、環境コンサルタントで元大学教授のキャロリン・ロバーツ氏が起こしたもの。テムズ・ウオーターのほか、ヨークシャー・ウオーター、アングリアン・ウオーター、セバーン・トレント、ノーザンブリアン・ウオーター、ユナイテッド・ユーティリティーズの各社が被告となっている。
ロバーツ氏側はこの日の審問で、これら6社が2015年以降、市場での支配的地位に乗じて下水処理を怠り、河川や海洋に未処理の下水を繰り返し放出したと主張。水道業界の監督機関Ofwatと環境庁には下水放出回数を実際より大幅に少なく報告し、本来ならOfwatが認めなかったはずの高い料金を顧客に請求したとし、総額8億~15億ポンドを顧客に返還するよう求めた。
イングランドで水道会社に対する集団訴訟が起こされるのは、これが初めて。英国では15年に成立した消費者権利法により、消費者が企業に対し競争法に基づく集団訴訟を起こすことが可能となっていた。
英国では雨水と下水が同じ下水管に流れ込むため、大雨の後に下水管が逆流してあふれることを避けるため、河川や海洋に未処理の下水を放出することが認められている。ただ近年はこれが頻繁になり、環境汚染や公衆衛生上の問題が深刻化。民営化された水道会社が利益を優先して下水道への投資を怠り、違法な下水放出を行っているとの批判が強まっている。
この問題を巡っては、環境庁とOfwatも調査を進めている。[環境ニュース]
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