ドイツ政府は10日、欧州連合(EU)加盟国を経由して入国した難民申請者を、最初の到着国に送還する計画を明らかにした。難民申請はEU域内に到着した最初の国で行うと定めた「ダブリン規則」の徹底を目指す。急務となっている不法移民の抑制策の一環だが、他のEU加盟国からはすでに不満の声が上がっている。
政府は欧州難民申請者指紋照合データベース(Eurodac)などを使って、難民申請受理の責任が自国にあるかを判断する。申請者はこの間、国境近くの施設に収容され、移動が制限される。
フェーザー内相は「他の加盟国で手続きを行うべき申請者は、当該国に送還する」とした上で、「実務面については国内の各州や他のEU加盟国と協議を進めていく」と述べた。
政府は不法移民対策の強化に取り組んでおり、前日には国境検査を全国で導入すると発表。これまで審査を行っていなかったフランスなどとの国境でも実施する方針だ。一連の措置は他のEU加盟国の反発を招いている。
ロイター通信によると、ポーランドのトゥスク首相は国境審査の強化を批判。ドイツに対して、影響を受ける国々との緊急協議に加え、ポーランドの難民政策への支援拡大を求めた。オーストリアのネハンマー首相は、ドイツが難民申請者を他国に送還するのであれば、オーストリアも同様の措置を取ると述べている。
ドイツが不法移民対策を急ぐ背景には、8月下旬に西部ゾーリンゲンで起きたシリア国籍の男による無差別殺傷事件がある。容疑者は難民申請を却下されシリアへの強制送還処分になっていたが、行方をくらましていた。
こうした中、9月1日に行われた旧東独テューリンゲン州とザクセン州の州議会選挙では、排外主義的な政策を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と、移民受け入れの厳格化を主張するポピュリズム政党ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)が台頭。22日に予定されるブランデンブルク州議会選でも、AfDが勝利し国政与党の連敗となる可能性が濃厚だ。
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