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激動の欧州経済生き抜くには 専門家が解説=独で弊社セミナー

欧州の政治動向や経済情勢をテーマにした「EMBビジネスセミナー」(エコノミック・メディア・ブレティン主催)が19日、独西部デュッセルドルフで開かれた。コロナ禍を経て約4年ぶりの対面イベントとなったセミナーには、在欧の日系企業66社から96人が参加。長年にわたり欧州市場の最前線で活躍する英シンクタンクと総合商社の2氏が、激動の欧州経済を日系企業が生き抜く鍵について語った。

英国の名門シンクタンクである国際戦略研究所(IISS)の日本担当主席で地政経済&戦略ディレクターを務めるロバート・ワード氏は、ウクライナでの戦争やガザ紛争が、全世界の勢力均衡の変化を招いていると指摘。その上で、経済安全保障の重要性が高まっていると強調し、中国からの投資を回避する英国や欧州で日本企業の存在感が高まっていくと話した。 また、三菱鉛筆が、独の筆記具大手ラミー(Lamy)を連結子会社化したことを例に挙げ、「日本企業とドイツやイタリアの中小企業が協業できる分野がたくさんある」と述べた。

欧州の政治経済情勢を解説するワード氏(EMB撮影)

欧州の政治経済情勢を解説するワード氏(EMB撮影)

欧州の政治情勢については、右傾化が進んでいるものの、「右派政党間の関係は不和で、結果として仏独の政治が流動的になる」と指摘。こうした状況でフォンデアライエン欧州委員長が続投したことは良いニュースだと述べた。英国については、労働党新政権が欧州連合(EU)との関係修復を部門別に模索するものの、「双方の信頼関係が極めて悪化している」として、EUへの再加盟はないと断言した。

欧州の環境規制について説明する加藤氏(EMB撮影)

欧州の環境規制について説明する加藤氏(EMB撮影)

伊藤忠商事の執行役員、欧州・CIS総支配人兼伊藤忠欧州会社社長の加藤修一氏は、同社の英国でのタイヤリサイクル事業や、セルビアでの廃棄物焼却発電事業、デンマークでのグリーン水素製造事業といった環境関連の取り組み事例を紹介。世界をリードする欧州の環境規制については「規制が変わる時はビジネスチャンスだ」と述べた。また、 円安が進む中、日本をもう一度、生産拠点にしようという動きに対しては、「人口減少が致命的な問題だ」と指摘した上で、企業人としては、「成長している欧州などの地場ビジネスで儲けることが重要だ」と強調した。

質疑応答では、不透明な欧州経済において製造業が生き抜く鍵について、ワード氏は「環境分野でイノベーションと研究開発(R&D)を加速させることが重要になる」と答えた。加藤氏は、欧州でどういった分野で二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)の適用が早期に進むかとの質問に対して「石炭やガスによる火力発電セクターや、製鉄やセメント業で需要が高まっている」と答えた。[日本企業の動向][環境ニュース]


関連国・地域: 英国ドイツEU
関連業種: マクロ・統計・その他経済政治

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