欧州委員会は15日に発表した春季経済見通しで、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比0.8%拡大するとの見通しを示した。2月の冬季見通しの予測を維持している。地政学的リスクが続く中でも、欧州経済は徐々に回復するとみる。
来年の成長率見通しは1.4%と、前回予測から0.1ポイント下方修正した。欧州連合(EU)加盟27カ国のGDPは、今年は1%、来年は1.6%の拡大を見込む。
今年の予測を国別に見ると、ドイツは0.1%と、冬季見通しから0.2ポイント下方修正。フランスも0.2ポイント引き下げ、0.7%とした。イタリアは逆に0.2ポイント引き上げ0.9%と予測。スペインの見通しは、前回の1.7%から2.1%に上方修正している。
一方、ユーロ圏のインフレ率は、23年の5.4%から24年は2.5%に減速すると予想。冬季見通しの2.7%から引き下げた。25年は2.1%へとさらに減速し、従来予想よりやや早い時期に欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%に低下するとみる。欧州委は今回、インフレ率は今年に入ってから予想以上に低下しており、今後も非エネルギー製品や食品の値下がりを背景に減速傾向が続くとの見方を示した。
経済全般については、先行き不透明感と下振れリスクは過去数カ月でさらに拡大したと指摘。中でも、ロシアのウクライナ侵攻の長期化と中東の紛争が最大のリスク要因になるとしている。また、サービス分野でインフレ圧力が弱まらず、インフレ減速が遅れることで、ECBが利下げを先延ばしする可能性もあると指摘する。
欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(人々のための経済総括、通商担当)は、「EU経済はここ数年、未曽有の試練に耐えてきたが、ようやく緩やかな成長を取り戻せる見通しとなった」と説明。地政学的緊張が依然としてリスクをもたらす中、加盟各国は成長促進に向けた改革や投資、財政健全化に取り組む必要があるとしている。
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