英国の郵便大手ロイヤル・メール傘下ポスト・オフィスの郵便局長らの冤罪(えんざい)事件を巡り、政府は13日、被害者の有罪判決を覆す新法案を議会に提出した。富士通製の勘定系システム「ホライゾン」が原因で有罪判決を受けた数百人の郵便局長らを一括して無罪とし、希望者には60万ポンドの補償金を直ちに支払う。政府は7月までにこの新法を成立させる方針。
新法が適用されるのは、1996~2018年に郵便局業務に絡む窃盗や詐欺、不正会計で起訴された郵便局長や従業員、家族など。対象者は、申請すれば個々に法的手続きを取らなくても無罪となる。また、補償額が確定するまでの間に一時金が支給されるほか、希望すれば直ちに60万ポンドを確定補償額として受け取ることもできる。
有罪判決は受けなかったものの、ホライゾン問題が原因で失職するなど影響を受けた郵便局長らも、直ちに7万5,000ポンドを確定補償額として受け取ることが可能となる。
スナク首相は「冤罪被害者が体験した苦労を償うことは不可能だが、この法案は被害者の汚名をぬぐうための重要な一歩となる」と話している。
新法案を巡っては法律専門家の間で、政府による司法判断への干渉となり、司法の独立が脅かされると危惧する声が上がっていた。これについてチョーク法相は「こうした異例の状況には、冤罪被害者が早急に補償を受けるための異例の措置が必要」との考えを示している。
この事件では、ホライゾンの不具合により郵便局の勘定に不足が生じ、1999~2015年だけで900人以上が誤って有罪判決を受けた。被害者の一部は既に死亡しているほか、自殺したケースもあり、救済が急がれている。
なお、新法はイングランドとウェールズで有罪判決を受けた人だけが対象で、スコットランドと北アイルランドでは別途、自治政府が法案を提出する必要がある。[日本企業の動向]
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