英国政府は12日、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)機能を持たないガス火力発電所について、新規の建設を2030年代まで認める方針を明らかにした。天候に左右される再生可能エネルギー発電を補完し、電力の安定供給を確保する狙いだが、2035年までに電力分野を脱炭素化する計画には逆行する形となる。
現行法では、新たに建設されるガス火力発電所について、CCS設備を付設することや、将来的な水素燃料への切り替えに対応することを義務付けている。政府はこれを改正し、こうした措置を施さない火力発電所も新設を許可する計画だ。
スナク首相は日刊紙デーリー・テレグラフへの寄稿で、「電力需要は拡大しており、これを再生エネルギー発電だけで賄えるようになるまでには時間がかかる」と強調。「クリーンエネルギーへの移行に当たっては現実的な視点を持つべき」と訴えている。
英国は、50年までに炭素排出量を実質ゼロ化する目標を掲げている。しかし、スナク首相はかねて、物価高にあえぐ国民の負担を軽減するため、グリーン政策の見直しを進める方針を示してきた。23年9月には、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに禁止する計画を35年まで先送りしたほか、今年2月にはヒートポンプの生産目標を再検討する考えも明らかにした。
なお、英国では年内に総選挙が予定されている。支持率で与党・保守党を大きく上回る最大野党・労働党は、30年までに電力を脱炭素化する計画を打ち出している。[環境ニュース]
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