富士通製の会計システム「ホライゾン」の不具合を原因とする郵便局長らの冤罪(えんざい)事件を巡り、当時のキャメロン政権と英国の郵便大手ロイヤル・メール傘下ポスト・オフィスが、事実の解明に向けた調査を中止していたことが明らかになった。2016年には富士通が郵便局アカウントの遠隔操作を行っていたかどうか確認するためのデータの洗い直しが始まっていたが、元郵便局長らが補償を求める訴訟を起こした後、この作業は打ち切られ、政府も打ち切りを黙認したという。BBC電子版が入手した書類を元に20日伝えた。
それによると、勅撰弁護士のジョナサン・スウィフト氏は15年に、政府の要請で富士通のシステムの問題について調査を実施。ポスト・オフィスが14年に大手会計事務所デロイトにひそかに調査を依頼して、富士通による遠隔操作が可能との指摘を受けていたことを知った。スウィフト氏はこれを受け、デロイトにさらなる調査を行うよう指示。デロイトは16年2月、ホライズンが導入されてから17年間のデータをすべて調べ直す作業に着手しており、ジャビド民間企業相を含む閣僚はこれを承知していたという。
しかし、同年6月に元郵便局長らが起こした訴訟が始まると、デロイトによる過去のデータの洗い直しは唐突に打ち切られた。ポスト・オフィスはその後も一貫して、郵便局長以外がアカウントを捜査することは不可能と証言。しかし実際には、政府と同社は多額の費用を投じて3回の調査を行い、遠隔操作が可能であることを承知していたことになる。一方、当時首相だったキャメロン外相が一連の事情を把握していたとの証拠はないという。
なお、この問題を巡っては、ポスト・オフィスのヘンリー・ストーントン前会長が18日、英政府から元郵便局長への補償を総選挙の後まで先延ばしにするよう求められていたと明らかにした。また、バデノック民間企業・貿易相から1月に辞任を求められた際、「誰かがこの問題の罪をかぶる必要がある」と告げられたと述べている。バデノック氏はこれに対し、「根拠のない言いがかりだ」と反発。「更迭に対する報復だ」と主張している。[日本企業の動向]
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