欧州中央銀行(ECB)は、6日公表した気候変動リスクを巡るストレステスト(健全性審査)の報告書で、経済のグリーン化は直ちに進めた方が経済的負担が小さいとの見方を明らかにした。実施を遅らせれば気候変動の影響が拡大するだけでなく、企業や家計への負担が大きくなり、銀行にとってのリスクも高まるとしている。
ECBは、ユーロ圏内の企業290万社と銀行600行を対象に調査を実施。グリーン経済への移行の開始時期やペースに基づいて三つのシナリオを想定し、2030年までに経済や金融システムに及ぼす影響を比較した。
各国政府がグリーン化に直ちに着手する「早期移行シナリオ」では、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で定められた30年までの排出量削減目標が順調に達成される上、経済への負担も少なく、金融システムへのリスクも低く抑えられるとしている。
政府が現行のエネルギー危機などを理由にやや遅れて26年にグリーン化に着手し、急ピッチで遅れを取り戻す「後期挽回シナリオ」では、排出量削減目標は達成されるものの、しわ寄せにより企業や家計の負担が増えるとみている。
同じく26年に着手し、より緩やかなペースでグリーン化を進める「遅延シナリオ」の場合は、無理のない移行のため企業や家計への経済的負担は早期移行シナリオと同程度にとどまるが、排出量削減目標の達成に失敗するため、気候変動の物理的リスクが高まるとしている。
ECBのデギンドス副総裁は「ネットゼロ経済への移行を前倒しで進める断固とした政策が必要」と指摘。「今のペースでは経済や金融システムにとってのリスクとコストが高まる」と訴えている。[環境ニュース]
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