欧州委員会は15日に発表した春季経済見通しで、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比1.1%拡大するとの見通しを示した。エネルギー価格の低下や供給不足の緩和、労働市場の堅調さを受け、2月に示した冬季見通しでの予測0.9%から引き上げている。
来年の成長率見通しは1.6%と、こちらも前回予測から0.1ポイント上方修正した。欧州連合(EU)加盟27カ国のGDPは、今年は1%、来年は1.7%の成長を見込む。
今年の予測を国別に見ると、ドイツは0.2%と、冬季見通しから変わっていない。フランスは0.1ポイント引き上げ、0.7%とした。イタリアも0.4ポイント引き上げ1.2%と予測。スペインの見通しは、前回の1.4%から1.9%に大きく上方修正している。
ユーロ圏の今年のインフレ率の見通しは5.8%と、冬季見通しの5.6%から引き上げた。欧州委は、インフレ率は昨年にピークに達した後、エネルギー価格の急落を背景に減速し続けていると指摘。エネルギーや非加工食品を除くコアインフレ率は高止まりしていたものの、こちらも今年第1四半期(1~3月)にはピークに達したとみている。
今回の見通しの下降リスク要因としては、コアインフレ率が予想外に長引いて家計消費を抑制し続け、一段の利下げが必要となることや、金融市場のリスク回避志向が高まること、財政支出の拡大によるインフレの再加速などを挙げている。
欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(人々のための経済総括、通商担当)は「欧州連合(EU)経済はロシアのウクライナ侵攻にもかかわらず、素晴らしくよく持ちこたえている」とした上で「エネルギー価格が確実に低下する中、各国政府は支援措置を段階的に縮小し、債務負担の軽減に取り組む必要がある」としている。
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