2035年までに欧州連合(EU)域内で販売される乗用車および小型商用車(LCV)の新車を全てゼロエミッション車(ZEV)とする法案を巡り、欧州委員会とドイツは25日、合成燃料「eフューエル」のみで走行する内燃エンジン(ICE)車の販売を特例として認めることで合意した。欧州委のティメルマンス上級副委員長(欧州グリーンディール政策総括、気候変動対策担当)らが明らかにした。ドイツはかねて、この法案でICE車の販売を全面的に禁止することに強く反対していたが、合意の成立により同法案が可決される見込みとなっている。
ティメルマンス氏はこの日、ツイッターで「将来的なeフューエルの乗用車での利用について、ドイツと合意に達した」と表明。また、ドイツのウィッシング運輸・デジタル相は、「実質排出量ゼロの燃料のみを使用するICE車は、35年以降も新車登録が可能となる」としている。
「eメタン」や「eケロシン」などの合成燃料は、大気中から回収された二酸化炭素(CO2)とグリーン水素から生産される。燃焼時にはCO2を排出するものの、生産過程でこれを回収するため、実質排出量はゼロとみなされる。
フィナンシャル・タイムズによると、今回の合意により、eフューエルのみを使用するICE車は、新たな車両区分として販売が認められる一方、化石燃料などでの走行を不可能とする技術の搭載が義務付けられる見通し。
同法案は2月に欧州議会で可決され、EU理事会での承認を待つのみとなっており、この段階で内容を巡る再交渉が行われるのは極めて異例。ただ、今回の合意内容は法案の文面自体の修正を必要としないため、同法案は28日にも採択される見通しとなっている。欧州委はその後、eフューエル車の特例措置を追加する手続きを取る方針。ウィッシング氏は、24年までにこの手続きが完了するとの見通しを示している。
欧州委は21年7月、35年までに乗用車とLCVの新車のCO2排出量平均値を対21年比で100%削減することを義務付けるこの法案を公表。事実上、ICE車の販売を禁止する方針を打ち出した。しかし、大規模な自動車産業を抱えるドイツやイタリアはこれに反対し続け、先には、両国にポーランド、ハンガリー、チェコ、ルーマニア、スロベニアを加えた7カ国がeフューエルを使用するICE車を特例とすることを提案していた。[環境ニュース][EU規制]
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