欧州委員会は9日、グリーン産業への国家補助の規制を一時的に緩和する措置を導入した。米国が「インフレ抑制法(IRA)」で打ち出した国内企業優遇策に対抗し、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵、製造プロセスの脱炭素化といった分野で欧州連合(EU)域内企業に、同等の補助を行うことを可能にする内容。2025年末まで適用される。
米国で昨年8月に成立したIRAは、エネルギー安全保障と温室効果ガス排出量の削減に向け、電気自動車(EV)などのグリーン技術を対象に向こう10年に総額3,690億ドルの税控除や補助を提供する内容。税額控除の条件として北米での製造を求めていることから、EU企業が米国に生産を移転することが懸念されている。
今回の措置では、域内企業が米国など多額の補助が受けられる国に生産を移転する恐れがある場合には、条件付きでその国と同等の補助を行うことが認められる。中小企業や貧困地域の企業に対しては、補助が拡大される。小規模プロジェクトでは、競争入札の省略を認めるなど交付条件が緩和される。
特に、バッテリーや太陽光パネル、風力タービン、熱ポンプ、水素電解槽、二酸化炭素(CO2)回収・利用・貯留(CCUS)といった「戦略的機器」の製造や、関連する重要原材料の生産・リサイクルは重点分野とし投資を促すとしている。
欧州委のベステアー上級副委員長(欧州デジタル化総括・競争政策担当)はこの措置について、「加盟各国が迅速に、明確かつ予測可能な形で補助を公布することを可能にするもの」と説明している。
EUの国家補助規制を巡ってはかねて、臨時の緩和措置が導入されている。昨年3月には、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けている企業に対し、欧州委の承認なしに一定額の国家補助を行うことが可能となった。また同年7月には、グリーン産業を対象に加える新たな枠組みが導入されており、今回はこれがさらに緩和される格好となる。[EU規制][環境ニュース]
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