欧州委員会は1日、欧州で炭素排出実質ゼロ化に向けた競争力を高め、迅速な気候中立化を支援するための「グリーンディール産業計画」を発表した。クリーン技術の強化に向けた環境を整備する狙い。
欧州委はこの計画の第1の柱として、承認の簡素化および迅速化を目指す「ネットゼロ産業法」を提案。バッテリーや再生可能エネルギー、水素、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)など、気候中立目標の達成に関わる生産施設の新設認可を迅速化し、戦略的プロジェクトの促進につなげる。
第2の柱は資金調達の迅速化で、2025年末まで国家補助規制を緩和。これにより欧州連合(EU)加盟国は、再生可能エネルギーや脱炭素産業への投資を支援しやすくなる。また、全ての加盟国が独仏のような水準で国家補助を出すことが難しい現状を踏まえて、域内市場の公平な競争条件を維持するため、既存EU基金の活用を推進する。新型コロナウイルス危機を受けた復興基金からは融資・補助金を合わせ2,450億ユーロを振り向け、中期的には、新興技術への投資に向け「欧州主権基金」を設立する計画だ。
第3の柱は人材開発で、グリーン移行により労働市場の35~40%に影響が及ぶことから、高技能者の育成は優先事項だと説明。戦略的産業における人材開発プログラムを展開するほか、EU域外の人材確保や技能育成への官民投資促進の方法を検討する。
第4の柱には開かれた貿易を据え、原材料へのアクセス改善や新たな輸出市場の確保を重要視した。メルコスール(南米南部共同市場)やチリ、メキシコ、ニュージーランドとの貿易協定拡大や、オーストラリアとの協定締結を目指す。また、域外国の補助金による市場のゆがみに対処する。
欧州委のフォンデアライエン委員長は、欧州はクリーン革命をけん引することを決意しているとコメント。手続きの迅速化でイノベーションが大量生産につながり、資金調達が容易になればクリーン技術産業の成長が加速するとしている。[EU規制][環境ニュース]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。