欧州連合(EU)の閣僚理事会の下部組織である常駐代表委員会(COREPER)は15日、ロシアに対する制裁の第9弾で合意した。新たに200近い個人と団体を対象に追加する一方で、世界的な食料安全保障の確保に向け、小麦などの食料や肥料の輸出に重要な役割を果たす個人については、制裁解除の道を開いている。新制裁は、官報掲載を経て正式に発効する。
今回の制裁では、ロシア軍と軍の将校、防衛産業の企業、ロシア国家会議(下院)と連邦会議(上院)の議員、閣僚、政党などを新たに制裁対象に追加した。
一方、食料・肥料のアフリカなどへの迅速な出荷に必要不可欠と見なされれば、既に制裁対象となっている個人の資産凍結を加盟国レベルで解除することを可能とする。ただ、加盟各国はこれを事前に欧州委員会に打診する必要がある。
これにより、ロシアの肥料大手や化学大手、農業大手の大株主である新興財閥が制裁を解かれる可能性がある。肥料関係者の制裁解除を巡っては、フランスやドイツ、オランダなどの主要国が世界的な食料危機の回避に向け必要と訴える一方、リトアニアとポーランドは強く反対していた。
今回の制裁ではほかに、軍事利用が可能な「デュアルユース品目」を中心に、化学物質や神経ガス、電子機器、IT(情報技術)部品などで輸出禁止品目を拡大。ドローン(小型無人機)など無人航空機のエンジンについては、ロシアへの直接の輸出だけでなく、イランなどロシアに無人機を供給する可能性のある第三国への輸出も禁じる。
また、ロシア地域開発銀行との全面的な取引禁止など3行との取引に制限を設けるほか、新たにテレビ局4局の放送を禁止。エネルギー・鉱業部門への制裁を強化するため、ロシアでの鉱業プロジェクトへの新たな投資を禁止することも盛り込まれている。[EU規制]
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