欧州議会と欧州連合(EU)理事会は13日、世界初の国境炭素税となる「国境炭素調整メカニズム(CBAM)」の導入で暫定合意に達した。EU企業が支払う炭素価格に見合う負担を域外企業にも求めることで公平性を確保するとともに、世界各国に排出削減を促す狙いがある。2023年10月から試験的に導入するが、本格的な課税開始時期はまだ決まっていない。
CBAMはまず、鉄・鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電気、電力を対象に導入し、その後に水素を追加する。これらを域外から輸入する企業は、排出される炭素の量に応じて一定の金額を支払う。支払う金額は、EU排出権取引制度(EU―ETS)に基づいて域内企業が支払う炭素価格と連動する。
ただ、来年10月からの試験運用期間中は報告義務のみが課され、実際の課税は行わない。課税開始の時期は、並行して進められているEU―ETS改革の結果によって決まる見通しだ。
欧州委員会は21年7月、欧州グリーンディールに基づく一連の法案の一つとして、CBAM法案とEU―ETS改革案を公表した。EU―ETSでは、域内の企業が排出規制の緩い国・地域の企業との競合で不利にならないよう、排出量の多い業種の域内企業に一定の排出枠を無償で割り当てているが、これはCBAMの導入と併せて段階的に廃止する方針だ。
欧州議会とEU理事会はEU―ETSの改革案ではまだ合意していないが、数日以内の交渉妥結が見込まれている。合意がまとまり、無償排出枠割り当ての廃止期限が確定すれば、CBAMの本格的な課税開始時期も定まることになる。
欧州議会・環境委員会のパスカル・カンファン委員長はCBAM法案について、「EUの企業と雇用を保護すると同時に、気候変動対策を強化するための大きな一歩」とコメント。EU理事会の議長国であるチェコのスィーケラ産業・貿易相は、「CBAMはEUの高い気候基準を順守する域外企業からの輸入を振興する仕組み」と説明している。[環境ニュース][EU規制]
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