欧州委員会は11日発表した秋季経済見通しで、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比3.2%拡大するとの予測を示した。上半期(1~6月)の伸びが予想を上回ったことを受け、前回7月の夏季見通しから0.5ポイント上方修正している。
欧州委は秋季経済見通しで、欧州経済は好調だった上半期から極めて厳しい段階に移ったと指摘。ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー危機により家計の購買力が低下し、生産が押し下げられているほか、景況感も大幅に低下していると説明する。この結果、来年の経済の状態は従来予想を下回る一方で、インフレ率は予想を上回る水準で推移するとみる。
ユーロ圏の来年の成長率見通しは0.3%と、前回予測の1.4%から大きく引き下げた。2024年は1.5%の伸びを見込む。欧州連合(EU)加盟27カ国のGDPについては、今年は3.3%伸びるものの、23年には0.3%増に減速し、24年には1.6%拡大するとの見方を示した。
今年の成長率見通しを国別に見ると、ドイツは1.6%と夏季見通しから0.2ポイント下方修正。フランスは0.2ポイント引き上げ2.6%とした。イタリアは0.9ポイント上方修正し、3.8%の成長を見込む。スペインの見通しは4.5%と、0.5ポイント引き上げた。
インフレ率については、ユーロ圏では今年は8.5%に達し、来年もやや減速するものの6.1%と高水準にとどまる見通し。EU全体の今年のインフレ率は9.3%、来年は7%を予想する。
欧州委は今回の見通しについて、先行き不透明感を特に強調。中でもガス市場の高騰や23年から24年にかけての冬のガス不足が最大のリスクとなるとの見方を示した。また、インフレの長期化や市場金利の無秩序な上昇も重要なリスク要因で、財政政策と金融政策の矛盾がこうしたリスクをさらに拡大させる恐れもあるとしている。
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