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エネルギー高騰対策案を公表 企業から1400億ユーロ徴収=欧州委

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は14日、欧州議会で施政方針演説を行い、エネルギー価格高騰への対策案を公表した。利益が急増している再生可能エネルギー事業者や原発事業者、石油・ガス会社から総額1,400億ユーロ超を徴収し、電力・ガス料金高騰で打撃を受けている家計や企業の支援に充てる方針。また、代替燃料として期待される水素の市場構築に向け30億ユーロを追加拠出するとしている。

欧州では、ロシアのウクライナ侵攻を受けたガス価格高騰を背景に電力料金が上昇。発電コストの低い再生可能エネルギー事業者などは棚ぼた式に高利益を上げている。フォンデアライエン委員長は、こうした企業の利益に上限を設け、超過分を徴収する方針。また、石油・ガス・石炭大手からも資金の拠出を求めるとしている。

ロイター通信によると、再生可能エネルギー発電や原発の売り上げに対して、1メガワット時当たり180ユーロの上限を課すとともに、石油・ガス・石炭会社や石油精製会社からは、今年の超過利益の33%を徴収する案が検討されている。

フォンデアライエン氏はまた、卸電力相場の急騰を受け電力会社が取引の際に支払いを求められる証拠金が拡大し、資金繰りが悪化している問題について、10月に欧州連合(EU)国家補助法を改訂し、加盟各国がこうした電力会社に融資保証を提供できるようにする考えも示した。加えて、証拠金ルールの改定や1日の電力相場変動幅を制限する措置も検討する。

このほか、ガスの市場価格の指標の見直しや、EU加盟各国の電力消費量を引き下げる措置も検討するとしている。

ロシアが経済制裁への報復措置として、欧州へのガス供給を制限する中、EUはガス備蓄の拡大や代替調達先の確保に取り組んでいる。フォンデアライエン委員長によると、EU域内のガス備蓄は現時点で容量の84%と、目標を上回るペースで拡大している。また、天然ガス輸入高に占めるロシア産ガスの比率は、昨年の40%から現在は9%に低下しているものの、域内のガス価格はコロナ禍前の水準から10倍超に上昇しているという。

一方、水素市場の構築に向けては、「欧州水素銀行」を新設する方針が打ち出された。水素購入資金の融資保証を提供することにより、30億ユーロを水素市場に投資するとしている。

このほか、リチウムなどグリーン・エネルギーへの転換に欠かせない重要な原材料の開発促進に向け「欧州重要原材料法」を提案する方針も示された。

エネルギー問題以外では、ウクライナ支援の一環として、EU域内とウクライナのローミングを無料化する方針が打ち出された。欧州委は今後、EU単一市場とウクライナ市場の一段の相互アクセス拡大に取り組むとしている。フォンデアライエン委員長はこれらについてゼレンスキー大統領と詳細を協議するため、この日、同国の首都キーウ(キエフ)を訪問した。[EU規制][環境ニュース]


関連国・地域: EUウクライナ
関連業種: 化学天然資源電力・ガス・水道マクロ・統計・その他経済政治

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