欧州委員会は14日に発表した夏季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比2.6%拡大するとの見通しを示した。前回5月の春季見通しから0.1ポイント引き下げている。ロシアのウクライナ侵攻が欧州経済に悪影響を及ぼし続けているためで、インフレ見通しは大きく引き上げている。
欧州委は、ウクライナ侵攻を受けたエネルギーと食品の価格高騰が、世界的なインフレ圧力の高まりや購買力の低下を招いており、金融政策による対処が予想より早まったと指摘。欧州経済はロシアの化石燃料への依存度が高いため、エネルギー市場における脆弱(ぜいじゃく)性が続くとしている。
来年の成長率は1.4%と、前回予測から0.9ポイント引き下げた。欧州連合(EU)加盟27カ国のGDP成長率については、今年は2.7%、来年は1.5%になると見込む。
今年の予測を国別に見ると、ドイツは1.4%で、春季見通しから0.2ポイントの下方修正。フランスは0.7ポイント引き下げ、2.4%とした。半面、イタリアは2.9%と0.5ポイントの上方修正。スペインは、4%と前回予想を維持した。
ユーロ圏の今年のインフレ率の見通しは7.6%と、春季見通しの6.1%から大幅に引き上げた。インフレ率は今年の第3四半期(7~9月)に8.4%でピークに達した後、来年の第4四半期には2.5%に減速すると予想。来年通年では4%に低下するとみている。EU全体の今年のインフレ率は8.3%、来年は4.6%を見込んでいる。
欧州委は、夏季の観光シーズンには期待ができるものの、経済活動は年間を通じて低迷すると予想。しかし来年は、労働市場の回復やインフレ減速などを背景に、四半期ごとの経済成長が勢いを取り戻すとみている。
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