欧州連合(EU)加盟各国と欧州議会は7日、最低賃金に関する域内共通のルールを定めた新法案で暫定的に合意した。域内労働者の保護に向け、加盟各国の最低賃金を妥当な水準とする狙いで、集団賃金交渉を促す条項も盛り込まれている。
新法案は、加盟各国に法定最低賃金の導入を義務付けるものではなく、最低賃金の域内共通の水準も定めていないが、加盟各国が策定する法定最低賃金について、物価や購買力、生産性といった明確な基準を示すことを求めている。
また、集団賃金交渉によって保護される労働者が全体の80%に満たない加盟国は、是正に向けた行動計画の提示を義務付けられる。加盟各国は最低賃金の適用率や、最低賃金の水準が十分かどうかについて、データ収集を義務付けられる。
この法案は、欧州委員会が2020年10月に提案していたもの。フォンデアライエン委員長は19年の就任当初から、最低賃金の域内共通の枠組みを導入する方針を打ち出していた。
EU加盟各国の法定最低賃金は、月額500ユーロに満たないブルガリアやルーマニアから、2,000ユーロを超えるルクセンブルクまで大きな開きがある。また、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、イタリア、キプロスの6カ国は法定最低賃金を定めていない。
欧州委のシュミット雇用・社会権担当委員は今回、「域内の多くの世帯が家計のやりくりに苦慮する中、加盟各国が妥当な最低賃金による保護を提供することは必要不可欠」と話している。
新法案は今後、加盟各国と欧州議会での正式な承認を経て官報に公示され、その20日後に施行される。加盟各国はその後、2年以内にこれを国内法化する必要がある。[労務][EU規制]
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