欧州委員会は4日、ロシアのウクライナ侵攻を受けた新たな経済制裁案を公表した。ロシア産石油の輸入を年内に段階的に禁止する内容で、これまでで最も厳格な措置となる。このほか、ロシア最大の国営銀行ズベルバンクを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する案も打ち出している。
今回の制裁は、ロシアの侵攻開始以降で第6弾の制裁となる。欧州連合(EU)はロシア産エネルギーへの依存からの脱却を目指しており、4月に打ち出した第5弾の制裁では、ロシア産石炭の輸入を禁止していた。
新制裁案では、さらに石油の禁輸に踏み込む。原油については6カ月以内に、石油精製品については年内に、それぞれ輸入を禁止する方針。段階的に実施することで、ロシアに替わる調達先を確保し、世界の石油市場への影響を最小限に抑える。
制裁案にはこのほか、ズベルバンクと同国の主要2行をSWIFTから排除する案や、ロシアの国有テレビ3社のEU域内での放映を禁止する案も含まれている。ロイター通信などによると、別の2行はモスクワ信用銀行、ロシア農業銀行とみられる。
加えて、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャでの民間人虐殺や、東部ドネツク州の港湾都市マリウポリ(Mariupol)の非人道的な封鎖措置に関わったロシア軍高官らを経済制裁対象リストに追加する。
EUはこの日、EU理事会の下部組織である常駐代表委員会(COREPER)の会合を開き、新制裁案について協議する。制裁の発動には全加盟国の支持が必要となるが、ロシア産石油への依存度が高いハンガリーとスロバキアは、かねて禁輸措置に抵抗している。最終案には、両国によるロシア産石油の禁輸を2023年末まで猶予する特別措置が盛り込まれる可能性もある。
フォンデアライエン欧州委員長は、ロシア産石油の禁輸について「一部加盟国はロシア産石油に大きく依存しており、容易ではない」と認めた上で、「われわれはこれに取り組む必要がある」と強調している。
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