欧州連合(EU)は7日に開いた外相会合で、欧州委員会が先に提案したロシアに対する新たな経済制裁の発動を決めた。ロシア産石炭の輸入禁止措置を打ち出しており、初めてエネルギー分野の禁輸に踏み込む格好となる。ただ、実施は8月以降とされている。制裁にはこのほか、ロシア船舶のEU域内への入港禁止や、ロシアとベラルーシのトラックの入域禁止なども含まれている。
EUは、ロシアの石炭輸出の約25%を占め、今回の禁輸措置により同国は年80億ユーロの輸入収入を失うことになる。ただ、EU政策専門サイトのユーラクティブによると、既存契約分の輸入を完了するため、官報での公示から4カ月の猶予期間が設けられており、実際の禁輸開始は8月上旬以降となる。猶予期間を巡っては意見が割れ、ポーランドなど一部加盟国は短縮するよう主張していた。
このほか、EU製の量子コンピューターや最先端の半導体など、総額100億ユーロの製品の輸出を禁止する。ロシア産の木材やセメント、肥料、魚介類、リキュールなど総額55億ユーロの輸入禁止も打ち出している。また、ロシアの「制裁逃れ」を防ぐため、ベラルーシからの炭酸カリウム輸入を禁止した。
金融分野では、ロシア銀行市場で合わせて23%を占める4行を対象に、EU域内の資産を凍結し、取引を全面的に禁止する。また、制裁対象リストには、新たに217人と18団体を追加。これには、ロシアが独立を承認したウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の閣僚や議員ら179人が含まれる。
ロシア船舶の入港禁止やトラックの入域禁止は、エネルギー製品のほか、農産物や食品、医薬品、人道物資などが積荷の場合は対象外となる。
新たな制裁は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊でロシア軍の撤退後に多数の民間人の遺体が見つかったことを受けた措置。ロシアの侵攻開始以降で第5弾の制裁となる。
欧州委のフォンデアライエン委員長は、既にロシア産石油の輸入を対象とした制裁案を検討中と明らかにしている。[EU規制]
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