欧州連合(EU)は28日、英国が洋上風力発電施設への国家補助で、国内製品を使用したプロジェクトを優遇し、輸入品を不当に差別しているとして、世界貿易機関(WTO)に異議を申し立てた。英国のEU離脱後に、両国間で貿易紛争が生じる初のケースとなる。
EUによると、英国政府は洋上風力発電プロジェクトの国家補助の交付に際し、機器の国内調達率を基準の一つとしている。EUはこれが国内製品と輸入品の対等な競争を義務付けたWTOのルールに反すると主張。結果としてEU企業が損失を被るだけでなく、再生可能エネルギーの生産コストを引き上げ、普及を遅らせる恐れがあると訴えている。
EUと英国は今後、解決に向けた協議を行う。60日以内に紛争が解決できなければ、EUはWTOによるパネル(小委員会)設置と裁定を求めることができるが、このプロセスには1年以上かかる可能性もある。
フィナンシャル・タイムズによると、英国は洋上風力発電の設置容量で中国に次ぎ世界2位につけるものの、これが国内産業の育成や雇用拡大につながっていない。再生可能エネルギーの業界団体リニューアブルUKによると、洋上風力発電プロジェクトの設備投資額のうち、国内経済への還元率はわずか29%にとどまっている。ジョンソン首相はこれを40~50%に引き上げ、稼働開始後の維持管理費も含めた国内調達率を60%とすることを目指している。[環境ニュース]
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