英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省は20日、英仏海峡に新たな海底送電ケーブルを敷設する民間プロジェクトを阻止する決定を下した。同ケーブルの英国側の上陸点となるイングランド南部ポーツマスで住民が反対運動を展開しており、その主張を認めた格好。プロジェクトを運営するアクインド(Aquind)は同決定を不当とし、法的手段を検討する意向を示した。
地元住民はかねて、送電ケーブルの敷設に伴い、主要道路の交通に支障が出ると批判。また、これにより、市内の歴史的な建造物やスポーツ施設などにも影響が及ぶとし、プロジェクトの撤回を要求してきた。政府は今回、アクインドのプロジェクトは人口密度の高い都市部に悪影響を及ぼす可能性があるとし、認可を見合わせた。
アクインドが計画していた海底ケーブルの送電容量は最大2,000メガワット。完成すると年間送電量は16テラワット時に及び、英国内の電力需要の5%に相当する。アクインドはフランスからの電力輸入が拡大すれば、2050年までに炭素排出量を実質ゼロ化する英政府の目標達成に寄与するほか、エネルギーの価格高騰を抑制できると主張している。
報道によると、英国の送電会社は35年までに全電力をクリーンエネルギーに切り替える取り組みの一環で、近隣諸国と電力の相互接続を進めている。英国本島は既に、フランスやベルギー、ノルウェーなどと海底送電ケーブルで接続されており、電力需要の10%を輸入で賄う。開発・建設中の海底ケーブルが開通すれば、26年までに電力輸入量は倍増する可能性もある。
アクインドを巡っては、与党・保守党に総額150万ポンドの献金をしてきたことが取り沙汰されている。また、共同設立者はいずれも英国籍を取得しているものの、ロシアとつながりがある。うち、ウクライナ出身の実業家アレクサンダー・テメルコ氏は、ロシアの石油会社ユコスの元トップ。ロシア出身のビクトル・フェドトフ氏も石油業界の実力者として知られる。[環境ニュース]
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