日立製作所とフランスの重電大手アルストムは9日、英国の高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」向け車両を共同で受注したと発表した。次世代高速車両の設計および製造と、12年間の保守サービスを請け負う。新幹線の開発に参加した日立と、TGV開発を手掛けたアルストムの競合2社が、英国の大型プロジェクトで手を組む。
日立の鉄道システム事業におけるグループ会社の日立レールとアルストムが折半出資する共同事業体が受注した。受注したのは1編成8両の新型車両54編成で、全長200メートル。欧州最速の最高時速360キロメートルを誇る。
車両は100%電気で駆動する。車体の軽量化やエアロダイナミクスを応用した設計と、エネルギー効率が高い最新の駆動技術で、世界最高水準のエネルギー効率を持つ高速鉄道車両となる。最先端の回生ブレーキシステムがエネルギーを送電網に戻すことで、エネルギー効率がさらに高まるという。
車両設計の大部分と製造、試験、保守は英国で行われる。車両製造は、日立が2015年に開業したイングランド北東部ダラム近郊のニュートンエイクリフ工場と、イングランド中部にあるアルストムのダービー工場およびクルーの新工場が担う。車両製造では2,500人以上の雇用が創出され、製造期間中に毎年1億5,700万ポンドの粗付加価値(GVA)が英経済にもたらされる見通し。
これらの車両は、現在敷設中のロンドン―バーミンガム間のHS2第1期区間のほか、イングランド中部のストークからクルー、北西部マンチェスター、リバプール、北部カーライル、スコットランドのマザーウェル、グラスゴーをつなぐ在来線でも運行される予定。英政府によると、新路線向けの車両製造は2027年から開始され、29~33年の間に運用が始まる見込みだという。
日立は19年6月、カナダのエンジニアリング大手ボンバルディアと共同でHS2向け高速車両に応札したが、ボンバルディアの鉄道事業は20年9月にアルストムによって買収された。HS2車両が生産されるアルストムのダービー工場は、ボンバルディアの工場だった。
英政府が16年に発表したHS2の車両入札の最終候補には、日立とボンバルディアの合弁に加え、アルストムも残っていた。このほか、ドイツの総合電機大手シーメンスやスペインの鉄道車両大手タルゴ、CAFも名を連ねていた。シーメンスは「今回の発表に非常に失望している」との声明を出し、政府の競争入札プロセスが不当だとして法的措置を取る構えを示している。[日本企業の動向]
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