国際通貨基金(IMF)は12日に発表した世界経済見通しで、ユーロ圏19カ国の2021年の域内総生産(GDP)が前年比5%拡大するとの見方を示した。フランスやイタリアで大きな回復が見込めるため、前回7月時点の予想から0.4ポイント引き上げた。来年の成長率見通しは4.3%と、前回から据え置いている。
ユーロ圏主要国の今年の成長率予測を見ると、ドイツは3.1%と前回予測から0.5ポイント下方修正。フランスは6.3%、イタリアは5.8%と、それぞれ0.5ポイント、0.9ポイント上方修正した。スペインは5.7%と、0.5ポイント引き下げている。なお今回の予測には、欧州連合(EU)の復興計画「ネクスト・ジェネレーションEU」がもたらす影響も織り込まれている。英国の今年のGDP成長率は6.8%と、前回予想から0.2ポイント下方修正。来年については5%と、0.2ポイント引き上げた。
IMFは、英国や米国などで今後数カ月はインフレ率が高い水準で推移するとして、各国の中央銀行に警戒を呼び掛けている。インフレの主な要因は需要と供給のミスマッチにあり、英国ではガス価格の高騰も影響しているという。ただしユーロ圏については、実質的なインフレの勢いは依然として弱いままになるとみている。
世界経済の今年の成長率見通しは5.9%と、前回から0.1ポイント下方修正。米国やドイツなど世界の富裕国で、新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」の影響やサプライチェーン(調達・供給網)の混乱などにより回復が鈍化していることが背景にある。
来年には、サプライチェーン問題の改善に伴ってほとんどの先進国でGDPが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前の水準に戻り、24年にはパンデミック前の予測を約1%上回ると見込んでいる。一方で、新興国と発展途上国では24年になってもパンデミック前の予測を5.5%下回る可能性があるという。こうした開きは、新型コロナウイルスワクチン接種の格差も大きいとしている。
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