英国政府が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期に集団免疫を目指し、ロックダウン(都市封鎖)の導入を遅らせたことは、英国史上最大の保健政策上の失敗に相当する――。政府の新型コロナウイルス対策を検証していた超党派の下院委員会が12日に公表した報告書で、こうした結論を示した。政府と科学顧問は一定の「集団思考」に陥っていた可能性があると指摘している。
この報告書は、与党・保守党のハント元保健相が率いる保健・社会福祉委員会と、同党のクラーク元ビジネス・エネルギー・産業戦略相が率いる科学技術委員会が共同でまとめたもの。事前準備や、規制による感染対策、検査・追跡、介護施設や社会の特定層へのパンデミックの影響、ワクチンの開発・展開の各項目について、関係者らの証言などに基づき政府の対応を検証している。
報告書は、政府の緊急時科学諮問グループ(SAGE)が招集されてから最初のロックダウン導入までに2カ月かかったことについて「科学顧問らが提案し、政府が採用した意図的な政策だった」と指摘。感染を抑制せずに受け入れた上で管理しようとする事実上の「集団免疫」の考え方に基づくものだったが、今ではこれが誤りだったことは明らかで、結果的に感染第1波の死者数が増えたとしている。
また、この政策が科学顧問と政府の合意に基づいていた事実からは、両者が一定の集団思考に陥り、ロックダウンや国境封鎖、検査や追跡といった他の方策に目を向けなくなっていた可能性も伺えるとしている。
このほか、検査・追跡制度の不備については、中央一括管理にこだわるあまり、大学や民間の研究機関の協力を受け入れなかったことや、各地区の公衆衛生職員を感染追跡に活用できなかったことが敗因と指摘。逆にワクチン展開については「産官学の効果的な協力」が奏功し、「英国史上最も効果的な措置の一つとなった」と評価している。
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