欧州連合(EU)が2050年までの炭素中立を目指す「欧州グリーンディール」と、日本とEUの「グリーンアライアンス」をテーマにした「EMBビジネスウェビナー」(エコノミック・メディア・ブレティン主催)が、29日開かれた。立教大学経済学部教授の蓮見雄氏が、欧州のエネルギー環境政策が日本企業などに与える影響について解説した。
EUが目玉の政策とする「欧州グリーンディール」について蓮見氏は、環境規制ととらえられがちだが、重要な点は「グリーンへ移行するとともに成長を目指す」産業戦略であると強調。この成長戦略においては、循環型経済への転換が柱であり、資源集約産業に対する施策を行うことで、環境保護を進めながら良質の二次原材料確保を目指すEUの意図を解説した。
また、EUの過去の成長戦略の失敗は資金が不足していたことに起因するとして、欧州グリーンディールでは資金の流れを変えるため、環境目的に貢献する経済活動の分類基準を示す「EUタクソノミー規則」により民間投資などを促進している点も大事だと指摘した。
脱炭素化へ向けて注目が高まっている水素については、欧州ではエネルギーシステム統合とセットと考えられている点で、日本とは語られ方が違うと説明。欧州では、水素はエネルギーの需要と供給を最適化する「セクターカップリング」の要であり、この分野は「日本の企業にとってはビジネスチャンスになる」と述べた。
今年5月に発足に向け合意された「日・EUグリーンアライアンス」も「日本にとって大きなチャンス」と指摘。グリーンアライアンスの柱として、規制およびビジネス面での協力拡大が含まれていることに注目し、具体策の中心が産官学連携に基づく欧州新産業戦略であることを考えれば、日・EU企業間の対話と協力が、EUの政策に影響を与える可能性もあると説明。今回のアライアンスが単にEUの政策に合わせるだけでないことを強調し、収益性があるはずの再生可能エネルギービジネスがうまく成り立っていない日本のルール整備につながるとした。
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