ガス卸売価格が高騰し、中小エネルギー企業の破綻が相次いでいる問題を巡り、クワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相は21日、公共放送BBCのインタビューで、破綻企業の顧客を引き受ける大手エネルギー企業に融資を提供することを検討していると明らかにした。ただ、破綻企業への支援は行わず、電力・ガス料金の上限も維持する方針をあらためて示している。
同相とエネルギー業界の監督機関Ofgemは20日、セントリカなどエネルギー業界大手各社のトップと会談。協議後の声明で、消費者保護を最優先し、料金上限も維持する一方、破綻するエネルギー企業への救済は行わない方針を明らかにしていた。ただ、この問題でエネルギー市場の競争が失われ、大手数社の独占状態に戻ることがあってはならないとの考えも示している。
英国ではガスの仕入れ価格が販売価格を上回り、エネルギー企業は原価割れで供給する格好となっている。こうした中、ここ数週間に小規模エネルギー企業4社が廃業。業界6位のバルブ・エナジーも破綻の危機に直面しているほか、他の中小4社も破綻が予想されている。破綻したエネルギー企業の顧客は、エネルギー業界の監督機関Ofgemの指示により他社が引き受けることになっているが、大手各社は新規顧客の受け入れにより負担が増すことを懸念している。
同相はガス相場高騰の理由として、新型コロナウイルス対策の制限措置が解かれ、世界経済が再開されるのに伴いガス需要が高まっていることや、アジアで液化天然ガス(LNG)需要が高まり欧州への供給が減っていること、米国で自然災害によりガス生産量が減っていることなどを挙げている。
ただ、英国はガス需要の50%を国内産で賄っており、30%を占めるノルウェー産ガスも10月から供給が拡大されることなどから、国内でエネルギー不足が生じる恐れはないと強調している。
■CO2供給企業に支援も
政府は20日、ガス価格高騰で英国内工場の操業を停止した米国の肥料大手CFインダストリーズを支援する可能性を示唆した。英国では同社がイングランド北東部ティーサイド(Teesside)と北西部チェシャー州の工場の稼働を停止したことを受け、二酸化炭素(CO2)とアンモニアが不足しており、食品・飲料の供給が大幅に滞る恐れが生じている。
クワーテング氏は声明で、CFインダストリーズのトニー・ウィル最高経営責任者(CEO)とこの問題について協議したと明らかにした。国内のCO2供給を維持するため、関係各社と連絡を取りながら状況を注視するとしている。
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