天然ガス価格の高騰を受け、英国のエネルギー大手各社が政府に数十億ポンド規模の支援を求めているもようだ。仕入れ価格が販売価格を上回る中、中小規模の供給企業が相次いで破綻し、大手が原価割れで顧客を引き受けるよう迫られる可能性が高まっているため。BBC電子版が20日伝えた。
政府は、破綻企業の顧客を引き受けるエネルギー企業に融資保証などの資金援助を行う可能性がある。また、破綻企業の顧客を集約する「バッドバンク」的機関の設立案や、特別管財人を指名し、顧客の引き受け先が決まるまで破綻企業を一時国営化する案など、ほかにも複数の選択肢を検討しているという。
英国ではここ数週間に小規模エネルギー企業4社が廃業。現在は業界6位のバルブ・エナジーが破綻の危機に直面し、政府に救済を求めているほか、他の中小4社も今後数日中の破綻が予想されている。業界関係者によると、今年初めに70社あったエネルギー企業の数が年末までに10社程度に減る可能性もある。
破綻したエネルギー企業の顧客は、エネルギー業界の監督機関Ofgemのルールに基づき、自動的に他社が引き受けることになっている。料金設定はOfgemが承認した水準となるが、大手各社は新規顧客の受け入れにより負担が増すことを懸念している。
フィナンシャル・タイムズによると、英国のエネルギー企業の電力・ガスの仕入れコストは、1世帯当たり年平均1,600ポンドに達する見通し。一方で、Ofgemは顧客保護のため電力・ガス料金の上限を年間計1,277ポンドと定めている。このため、エネルギー企業は原価割れでエネルギーを供給する格好となっている。
クワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相は20日にエネルギー大手各社のトップと会談し、今後の措置について協議する。
英国や欧州各国では、ロシア産天然ガスの供給が減っていることに加え、コロナ禍で滞っていたガス田の保守作業が今年にずれ込んだこともあり、ガスの備蓄水準が低下し、ガス卸売価格の高騰を招いている。なお、同相によると国内でエネルギー供給が不足する恐れはなく、冬の暖房需要も十分に満たせる見通し。
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