人類の影響により地球が温暖化していることは疑いのない事実――。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日公表した気候変動の科学的根拠に関する第6回報告書でこう結論付けた。地球の平均気温が産業革命前の水準から摂氏1.5度以上、上昇する時期は20年後に迫っていると予測。3年前に公表された特別報告書の内容を裏付ける格好となっている。
IPCCは今回、平均気温は温室効果ガスの排出により既に1.1度上昇していると指摘。「人類の影響により大気と海洋、陸地が温暖化していることは疑いようのない事実」と、前例のない力強さで言い切った。
地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」では、産業革命以前と比べた世界の気温の上昇幅を2度未満に抑えると共に1.5度未満に近づける目標を掲げている。しかし、報告書は「地球温暖化ガス排出量の迅速かつ大規模な削減に直ちに着手しない限り、気温上昇を1.5度近くはおろか2度に抑えることさえ不可能になる」と予想している。
一方で、温暖化ガスを大幅に削減し続ければ、気候変動は制限できるとも指摘。ただ、気温の安定化には20~30年かかる可能性もあるとしている。
報告書では、気候変動が進行すれば、気温が上昇するだけでなく、水循環の激化により大雨や洪水、干ばつがより多くの地域で頻発すると予想。海面が今世紀末まで上昇し続け、過度の海面の上昇によるこれまで100年に一度だった規模の水害が今世紀末には毎年起きるようになるとみている。また、気温上昇や洪水などの被害は、都市部でさらに深刻化するとしている。
国連のグテレス事務総長は「今回の報告書は人類にとっての非常事態警報」とコメント。「もはや一刻の猶予も弁解の余地もない」とした上で、英国のグラスゴーで11月に開催される国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第26回締約国会議(COP26)での成果に期待感を示した。[環境ニュース]
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