欧州連合(EU)と米国は15日、航空・防衛最大手エアバスと米ボーイングへのそれぞれの補助金を巡る17年来の紛争の解決に向けた枠組みで合意した。向こう5年にわたり報復関税を停止するとともに、航空機への補助金について協議する閣僚級の作業部会を設けるとしている。
この紛争は、米国が2004年、EUのエアバスに対する補助を不当として世界貿易機関(WTO)に提訴したことに始まる。これに対しEUも、米政府のボーイングへの補助を不当として訴え、いずれもWTOから協定違反と認められた。その後、19年10月には、米トランプ政権が総額75億ドル相当のEU製品への報復関税を発動。これを受け、EUも20年11月、総額40億ドル相当の米国製品への報復関税を導入した。この結果、双方はこれまでに合わせて33億ドル以上の関税を追加で支払っていた。
ただ、欧州委と米国は今年3月、互いに科していた報復関税を4カ月停止することで合意。さらに4月には、この停止期間を6カ月に延長することで合意しており、バイデン米大統領の就任を受け、双方が妥協点を模索しているとの見方が強まっていた。
欧州委のドムブロフスキス通商担当委員と米通商代表部(USTR)のタイ代表はこの日、ブリュッセルで開かれた米・EU首脳会議(サミット)と並行して会談し、この紛争の解決に向けた枠組みで合意に達した。
それによると、向こう5年間は互いへの報復関税を停止し、通商担当の閣僚級の作業部会を設けてこの問題の協議に当たる。また、大型民用機メーカーへの資金提供は市場条件で行うことや、研究開発(R&D)資金の援助は透明なプロセスを経て実施するとともに、政府資金で開発された技術は一般公開すること、双方の航空機産業に有害な第三国の非市場的慣行に共同で対処することなどでも合意している。
ドムブロフスキス氏は、「この合意は、米・EU関係が次の段階に移行しつつあることの証」とコメント。タイUSTR代表は、「最も緊密な同盟相手の一つと戦う代わりに、共通の脅威に共に立ち向かえるようになった」と話している。
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