欧州連合(EU)は、新型コロナウイルスワクチンの供給遅延を巡り、英国の製薬大手アストラゼネカに対する法的手続きを開始した。欧州委員会のキリヤキデス保健衛生・食の安全担当委員が26日、発表した。
同委員は自身のツイッターで「欧州委員会は、全EU加盟国と共にアストラゼネカを提訴することを決めた」と明らかにした。
AP通信が欧州委の報道官の話として伝えたところによると、法的手続きは23日に開始されていた。同報道官は提訴の理由について「アストラゼネカが欧州委との事前購入契約の一部条項を守らず、ワクチンの期限内の供給に向けた信頼できる戦略を提示しなかったため」としている。
欧州委は昨年8月、同社がオックスフォード大学と共同で開発したワクチンの事前購入契約を締結。最低3億回分購入するほか、オプションとして1億回分を追加購入する権利も確保した。このうち約8,000万回分は今年第1四半期(1~3月)に供給される予定だったが、実際の納入は3,000万回分にとどまった。また、第2四半期は1億8,000万回分の供給が予定されていたものの、こちらも7,000万回分にとどまる見通し。
同社はかねて、オランダとベルギーの工場での生産の遅れが供給遅延の原因と説明している。これに対し、欧州委は同社が契約に違反しているとして強く批判し、事前契約のオプションも行使しない方針を示していた。
アストラゼネカは今回、欧州委が法的手続きを決めたことは「遺憾だ」とした上で、「提訴の根拠はなく、早急に紛争を解決できる機会を歓迎する」としている。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。