英国で新型コロナウイルスの変異種の感染が拡大していることを受け、同国からの入国を禁止・制限する国が相次ぐ中、欧州委員会は22日、欧州連合(EU)としての共通政策に関する勧告を採択した。加盟国は現在、英国に対し独自の規制を講じており、人の移動や物流に深刻な混乱が生じている。同委はこうした状況の打開に向け、貨物輸送と必要不可欠な渡航の再開を呼び掛けた。
欧州委は、域内の自由移動のルールを31日まで英国にも適用すると説明。加盟各国はこの間、英国からの入国は拒否できない。
医療従事者らは業務に当たる際、出発の72時間以内にPCR検査または抗原検査を受けなければならない。だが、自主隔離に入る必要はないという。運輸業者はEU域内であれば入国制限などを受けず、船舶や車両、航空機で国境を越える際は、感染検査や自主隔離の義務も負わない。ただし、英・EU間の一定の状況によっては、迅速抗原検査の受検が求められる。
来年1月1日以降は、英国は第3国に分類され、EUへの不要不急の渡航が制限される見通し。EUは現在、新型コロナの感染リスクが低く入国を許可するべき域外国のリストに日本など8カ国を含んでいる。
新型コロナの変異種は、既存のウイルスと比べて最大70%感染しやすく、基本再生産数を0.4ポイント以上押し上げる可能性もあるという。変異種がより深刻な症状や致死率の上昇を招く確証はなく、ワクチンが効かない可能性も低いとみられている。9月に初めて英国で確認されて以降、ロンドンやイングランド南東部を中心に感染が急速に広がっている。
こうした事態を受け、英国からの入国を禁止・制限する国が週末にかけて相次ぎ、現在は世界50カ国を超える。
■英仏、23日までに貨物の往来再開か
英国とフランスの両政府は、23日までに貨物の往来を再開する方向で合意に至る見通しだ。フランス政府は先に、英国からの旅客・貨物を含む陸海空全ての入国を停止。英仏海峡では、貨物輸送車両などが立ち往生している。往来再開を認める条件の一つとして、トラックドライバーへの大規模感染検査の実施が挙がっている。BBC電子版が伝えた。
フランス政府は21日午前0時から48時間、英国からの陸海空全ての入国を停止。これを受け、イングランド南東部ケントでは、フランス行きの貨物車両1,500台超が待機状態にあり、大規模な渋滞が発生している。英国内のスーパーでは、特に生鮮食品の品薄が懸念されており、ジョンソン首相は先に、フランスのマクロン大統領に貨物車両の往来再開を求めていた。
英国のパテル内相はスカイニュースの取材に対し「われわれは過去24時間にわたってフランス側とさまざまな問題について協議しており、22日も継続する」とコメント。結論はこの日のうちに出される見通しだ。
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