欧州委員会は5日発表した秋季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比7.8%縮小するとの見通しを示した。第3四半期(7~9月)の力強い回復を受け、前回7月の夏季見通しでの予測8.7%減からは上方修正したものの、なお史上最悪の落ち込みを予想。また、ここへきて新型コロナウイルスの感染が急速に再拡大していることから、今回の見通しを巡る不透明感と下振れリスクは大きいとしている。
GDPは来年には4.2%増に回復すると見込むが、こちらは前回予測から1.9ポイント引き下げている。2022年のGDPは3%増を予想する。一方、欧州連合(EU)加盟27カ国のGDPは、20年に7.4%縮小し、21年には4.1%、22年には3%それぞれ拡大すると見込む。
国別に見ると、ドイツのGDPは今年は5.6%減、来年は3.5%増となる見通し。フランスは今年に9.4%縮小し、来年は5.8%回復するとみている。イタリアは今年は9.9%落ち込み、来年は4.1%拡大すると予想。スペインは今年に12.4%減と域内最大の落ち込みを示し、来年は5.4%回復する見込み。オランダは今年に5.3%減り、来年は2.2%増と域内最低水準にとどまる見通しだ。
1月末にEUを離脱した英国については、今年は10.3%縮小すると予測。来年は3.3%増の回復を見込む。この見通しは、EU離脱後の移行期間が12月末に終了した後、英・EU間の貿易が世界貿易機関(WTO)の最恵国待遇で行われるとの前提に基づく。欧州委はこれまで、英・EU間の自由貿易協定(FTA)締結を経済見通しの前提としていたが、いまなお交渉がまとまっていないことを背景に、前提条件を見直した格好となる。
欧州委は、域内経済は第3四半期に目覚ましい回復を遂げたものの、新型コロナウイルスの感染が再拡大し、多くの加盟国が封鎖措置を再導入していることから、第4四半期は再び停滞すると予想。また今回の見通しは、22年末まで一定の感染対策が続けられるものの、制限措置は現状より徐々に緩和されるとの前提に基づいている。
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