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EU、原材料同盟を正式発足 輸入依存脱却し「戦略的自治」へ

欧州委員会は9月30日、欧州連合(EU)域内企業による原材料の安定的な供給確保に向け、「欧州原材料同盟」を正式に発足させた。レアアース(希土類)など貴重な原材料の輸入依存から脱却し、「戦略的な自治」を目指す。

EUでは炭素中立やデジタル化に向け、非エネルギー材料の需要拡大が見込まれるが、現時点では重要な原材料の多くを輸入に依存。レアアース類は需要の98%を中国から輸入しているほか、洗剤の原料となるホウ酸塩の98%をトルコから、プラチナの71%を南アフリカから調達している。

欧州委によると、コバルトやボーキサイト、ベリリウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、ニオブ、ホウ酸塩などは域内で相当量の埋蔵が見込まれる。また、電子廃棄物を再利用すると、一部の原材料を抽出することが可能だが、域内の年間990万トンに上る電子廃棄物うち、再利用されるのは30%、抽出される原材料は1%未満にとどまっている。

欧州委のシェフチョビッチ機関間関係・先見性担当副委員長は、代替調達や資源の効率化、革新技術などの分野で域内の力を結集することで、材料の安定供給を目指すことができると説明。また、ブルトン域内市場・産業・デジタル単一市場担当委員は、選択肢や代替調達、競争を可能とする戦略的な自治により、経済的・地政学的な依存を回避できると話した。

原材料同盟は、EUで2017年に電気自動車(EV)向け電池の開発・生産に向けて結成された「欧州バッテリー同盟(EBA)」をモデルとし、企業やサプライヤーをはじめ、政府や研究機関、投資家などあらゆる関係者の参加が可能。EBAは25年までにバッテリー向けリチウムの大部分を域内で自給できる見通しで、原材料でもこれに続きたい考えだ。

なお、EUではEVやエネルギー貯留の分野だけで、50年までにリチウムの需要は現在の60倍近くに、コバルトの需要は15倍にそれぞれ拡大する見込み。また、レアアースの需要も10倍に膨らむとみられている。こうした原料の確保を巡っては、新型コロナウイルス危機に伴うサプライチェーン(調達・供給網)の寸断で、世界的な競争が激化している。[環境ニュース][EU規制]


関連国・地域: EU
関連業種: 鉄鋼・金属天然資源マクロ・統計・その他経済

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