ロンドンに22日、日本と北欧をテーマとするコンセプトストア「パンテクニコン(Pantechnicon)」がオープンした。カフェやレストラン、ショップが軒を連ね、「シンプルさと機能性」という共通点を持つ二つの文化を体験できる。パンテクニコンの共同創設者であるバリー・ハースト氏は「両者を融合するのではなく、同じ場所で個々に取り扱うことで、訪れた人々に新しい発見を提供したい」と見所を語った。(新免那月)
パンテクニコンは地下1階から屋上までの5フロア構成で、ロンドン中心部にあるハイドパークの南側に立地。プロジェクトはおよそ5年前に始動し、当初は今年6月のオープン予定だったが、新型コロナウイルス流行の影響で営業開始が遅れた。建物の外観はギリシャ調だが、館内の壁や床、テーブルなどには木材が多用され、日本と北欧の共通点の一つでもある「木の文化」を感じさせる内装となっている。
日本関連では、フランス人と日本人が立ち上げたパリ発ブランド「メゾン・キツネ」が手掛ける「カフェ・キツネ」が英国初出店。欧州で日本酒振興を目指す教育事業「ミュージアム・オブ・サケ」の創業者で、「酒サムライ」と呼ばれる菊谷なつき氏が選んだ日本酒やウイスキー、梅酒、ワインなどを取りそろえるバー兼ボトルショップ「サカヤ(Sakaya)」や、日本で活躍する米国人女性がプロデュースする日本食レストラン「幸(サチ)」も順次オープン予定だ。
館内のショップには、包丁や自転車といった日本製品、文房具や木製おもちゃといった北欧製品など数多くの商品が並ぶ。リテール責任者の寺瀬脩氏は商品を選定するに当たり、日本の各地を実際に訪れたといい、「その製品の背景やストーリーを調べて、ブランドではなく製品自体に焦点を当てた」と話す。さまざまなイベントも催される予定で、10月初めには日本酒などの酒の試飲会や塩こうじ作りの体験会が開かれる。
北欧系のレストラン「エルダー(Eldr)」は、燻製や漬け込みなど北欧の伝統的な手法を用い、英国産の食材を使った料理を提供する。屋上のバー「ルーフ・ガーデン」は、フィンランドの園芸家タイナ・スオニオ氏が手掛けた緑あふれるスペースの中で、北欧出身の若手バーテンダーの創作カクテルが楽しめる。
ハースト氏は「北欧と日本の文化は、シンプルさや機能性、職人技などの点でよく似ている」と魅力を紹介。プロジェクト責任者の一人、カイリー・クラーク氏は「パンデミック下でオンラインショッピングへの移行が加速する中、実際にパンテクニコンを訪れ、商品を見たり触れてみたりを通じて、買い物体験を味わってほしい」と話した。
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