欧州委員会のフォンデアライエン委員長は16日、欧州議会で施政方針演説を行い、新型コロナウイルス危機で打撃を受けた欧州連合(EU)経済の復興に「欧州グリーンディール」を通じて取り組む方針を示した。これに向け、2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標を1990年比で40%減から55%減へと大幅に厳格化する案を打ち出している。
昨年11月に就任したフォンデアライエン委員長にとって、今回は初の施政方針演説となる。同氏は欧州グリーンディールを公約に掲げて就任。欧州委の新体制発足後は新型コロナ危機への対応に追われたが、7月には欧州グリーンディールとデジタル化を柱とした総額7,500億ユーロの経済復興計画で加盟各国の合意を取り付けた。
同氏は施政方針演説で「排出量削減目標を40%から55%に引き上げることについては、行き過ぎとの意見と足りないとの意見がある」と認めた上で、「影響評価を行った結果、経済も産業もこの水準なら対応できることが明らかになった」としている。
同氏は加えて、復興計画の資金7,500億ユーロのうち30%を気候変動対策に使途を限定したグリーン債で調達することも提案した。新型コロナ対策については、EU保健同盟を強化して加盟国間の調整を強化するともに、世界各国にパンデミック(世界的流行)への対応を呼び掛ける方針を示した。
このほか、移民・難民問題については、加盟各国に責任を負うことを求める「新協定」を提案。また、デジタル化については、データや技術、インフラ面でEUの主導的地位を強化する姿勢を示している。
なお、英国との将来的な関係を巡る交渉については多くを語らなかったものの、「期限内に合意がまとまる可能性は、日に日に減っている」と指摘。英政府が昨年10月に合意したEU離脱協定の一部を無効化する法案を提出したことを巡っては、双方が合意・批准した協定を「一方的に修正したり、無効化することはできない」とし、「これは合法性と信頼と誠意の問題だ」と訴えている。[EU規制][環境ニュース]
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