英政府は25日、スペインを26日付で自主隔離措置の免除対象国・地域のリストから除外し、同国からの入国者に14日間の自主隔離を再度義務付けると発表した。同国で新型コロナウイルスの感染が急拡大しているため。ただ、夏季休暇シーズンで渡航中もしくは渡航計画中の英国民が多いことから、急な変更に批判が噴出している。
英政府は今回、既にスペインに滞在中の旅行者らはそのまま滞在可能としつつも、帰国時の自主隔離を要請。一方で、スペイン本土については渡航を自粛するよう呼び掛けている。これにはカナリア諸島や、マヨルカ島などのバレアレス諸島は含まれていないが、それでも帰国時の自主隔離義務は発生する。政府は企業に対し、今回の方針変換により出勤できなくなった従業員について配慮するよう伝えている。
英国は10日、日本やドイツ、フランスなどからの入国者に対し、14日間の自主隔離を撤廃した。新型コロナウイルスの感染リスクが低いと見なされた計58カ国・地域と、英海外領土全14カ所が対象。イングランド、ウェールズ、北アイルランドは当時、スペインも自主隔離免除の対象国としていたが、2週間ほどで方針を急転換した格好だ。
BBC電子版などによると、独旅行大手TUIは今回の決定を受け、英国からスペイン本土への旅行商品を8月9日まで全てキャンセルすると明らかにした。それ以降の航空便についても早急に見直すとしている。英国法人のアンドリュー・フリンタム代表は「今回の発表について事前に知らせを受けておらず、信じられないくらい失望した」とコメント。一方で、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)や英格安航空大手イージージェットは、向こう数日の航空便を欠航にする計画はないとしている。
観光業が国内総生産(GDP)の12%を占める観光大国のスペインにとり、英国からの旅行客は全体の2割超を占めることから、経済への影響は大きい。なお、シャップス運輸相は現在スペインで夏季休暇を過ごしていることから、帰国時に他の国民と同様、自主隔離義務を負うことになるという。
英政府はドイツやフランスといった他の免除対象国についても、感染状況を注視して必要な判断を下すとしている。スペインを巡ってはノルウェーも24日、スペインからの入国者に10日間の自主隔離を義務付ける方針を示し、フランスも北東部カタルーニャ自治州を対象に渡航自粛を呼び掛けている。
スペインのゴンザレス外相は米CNNの取材に対し、他の多くの国と同様、スペインも「感染は拡大してはいるが国と自治政府の両方がそれぞれの感染事例の制御に動いている」と強調した。
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