フランスのエリゼ宮(大統領府)は3日、フィリップ首相の辞表提出に伴い、高級官僚で南部プラド町長のジャン・カステックス氏(55)を新首相に任命すると発表した。カステックス氏は政府の担当長官として新型コロナウイルス流行に伴う封鎖措置の緩和策を指揮し、手腕が評価されて大抜てきされた。マクロン政権の信頼回復に向けた責務を負うことになる。
カステックス氏は中道右派・共和党に所属しており、サルコジ元大統領に近いが、知名度は低い。だが、フィナンシャル・タイムズが取材した政府高官によると、中央政府の知見を持ちつつ地方にも根付いており、マクロン大統領にとって理想の人材という。フランスでは地方自治体の首長が政府の官僚職を担ったり、大臣職と兼務することが可能。
先の地方選挙では、マクロン大統領率いる与党・共和国前進(REM)が惨敗。このことから、マクロン氏は2022年の大統領選に向けた体制立て直しとして内閣改造を行うと見られていた。AFP通信によると、同大統領とフィリップ氏は2日に会談し、新たな段階に向けて新たな政府が必要となるとの合意に達したという。
マクロン大統領は17年の就任から3年間で、野心的な経済改革や年金改革を試みたが、反政府デモ「黄色いベスト運動」やフランス国鉄(SNCF)をはじめとする運輸業界などによる大規模ストライキに見舞われた。一方で、フィリップ氏の支持率は新型コロナウイルス対応が評価され、同大統領を上回る状況となっていた。
フィリップ氏は先の統一地方選で、北西部ルアーブル(Le Havre)の市長職に出馬。他党候補に大差を付けて勝利したが、当初は勝っても市長職を現職に譲る意向を示していた。フィリップ氏の辞職により、ルアーブル市長職を基盤に将来的に大統領選に出馬する道筋が開かれた形となる。
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