欧州航空・防衛最大手エアバスは6月30日、世界中で2021年夏までに従業員約1万5,000人を整理すると発表した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の影響による業績悪化に対応するためで、創業以来で最大規模となる。
エアバスは現在、旅客機部門で9万人を雇用。今回の整理人数は全体の17%に相当する。地域別では、フランスで5,000人、ドイツで5,100人、スペインで900人、英国で1,700人、その他の国外拠点で1,300人が削減される見通し。これらにはエアバス傘下の仏航空機部品大手ステリア・エアロスペースや独航空機部品メーカーのプレミアム・エアロテックも含まれる。また、新型コロナ危機発生前に既に決めていたプレミアム・エアロテックの従業員900人の削減については、今回の大規模整理に含まれる格好。労働組合などとの協議は今秋から開始する予定で、自主退職や早期定年退職、長期の失業補償なども駆使して対応するとした。
旅客機部門は過去数カ月で40%近くの減収となり、航空機の生産率も同様の落ち込みを示している。同社は航空業界が新型コロナ危機前の水準に戻るのは早くても2023年とみる上、25年までずれ込む可能性もあることから、追加措置の決定に至ったとしている。
ギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は「エアバスは業界を襲う過去最大の危機にひんしている」とコメント。今回の措置はパンデミックによる最初の衝撃を緩和するもので、企業を維持し、健全かつグローバルな企業として危機から脱しなければならないと強調した。
フランス政府は6月、航空・防衛産業向けの総額150億ユーロの支援策を発表。最大10万人の雇用喪失を防ぐ目的で、資金は企業向け融資、サプライヤーや下請け企業の近代化支援、中小企業育成の投資ファンド設置などに充てられる。業界への大規模支援を発表した後だけに、今回のエアバスの発表には政府と労組の双方から批判が噴出。ルメール経済・財務相は同計画を「過剰だ」と批判し、見直す必要があると主張している。また、仏管理職総同盟(CFE―CGC)の代表者は「雇用を守るための大きな戦いとなる」と発言。英最大労組ユナイトは「産業による故意の破壊行為だ」と糾弾している。[労務]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。