金融情報サービス会社IHSマークイットは21日、5月のユーロ圏総合PMI(購買担当者景気指数、速報値)が30.5ポイントとなったと発表した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を受け、1998年7月の統計開始以降で最低に沈んだ4月から16.9ポイント上昇。景気の「改善」と「悪化」の境目である50ポイントは引き続き大きく下回っているものの、過去3カ月で最高となり、封鎖措置緩和に伴う経済回復の兆しが見え始めている。
ユーロ圏の製造業PMIは39.5ポイントと、前月から6.1ポイントのプラス。新規受注と生産高は、共に過去最大の落ち込み幅を記録した前月の水準からは脱したものの、引き続き大きく減少した。仕入れ価格の下落ペースは2016年3月以降で最も加速した半面、出荷価格の低下幅は前月から変化がなかった。
製造業PMIの国別データを見ると、ドイツは36.8ポイントと、前月から2.3ポイント上昇。フランスは8.8ポイント上がり40.3ポイントだった。いずれも分岐点割れが続いている。
ユーロ圏総合指数のうち、生産高は引き続き大幅に縮小し、新規受注も急減している。雇用は3カ月連続で落ち込んだものの、削減幅は統計開始以降で最大を記録した4月から緩和した。仕入れ価格と出荷価格は、共に下落を続けている。
■サービス業の落ち込みもやや緩和
ユーロ圏のサービス業PMIは28.7ポイントと、統計開始以降の最低記録を更新した前月から16.7ポイント上昇し、こちらも過去3カ月で最高に達した。国別ではドイツが31.4ポイントと15.2ポイントのプラス。フランスは19.2ポイント伸びて29.4ポイントとなり、共に統計を始めてから最低を記録した前月から上向いている。
IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは今回の結果について、ユーロ圏の事業活動は引き続き大きな打撃を受けていることがうかがえるが、底を打った4月からは上向きつつあると指摘。2020年第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)は前期比10%程度落ち込むとしつつ、各国が実施している封鎖措置が夏に向けてさらに解除されるにつれ、経済の停滞からも徐々に抜け出していくだろうと分析する。ただ、今後も需要低迷は長引くほか、政府の雇用維持スキームの終了に伴い、企業はさらに人員削減を進める可能性があると予測。今年のGDPは9%近く縮小する上、完全な経済回復には数年を要するだろうとの見方を示している。
■英もわずかに回復
5月の英国の総合PMI(速報値)は28.9ポイントと、1998年1月の統計開始以降で最低を記録した前月から15.1ポイント伸びた。新型コロナウイルスの感染拡大による需要減退や、顧客からの注文取り消し、事業活動の停止などを背景に、新規受注と雇用は過去2番目の落ち込み幅を記録。仕入れ価格は2カ月連続で低下したが、運輸価格の上昇などに伴い、出荷価格は上がっている。
製造業PMIは8ポイント上がり40.6ポイント。回答企業の半数超は生産高が5月も減少するとした一方、24%は前月から拡大するとみている。サービス業PMIは27.8ポイントと、4月から14.4ポイント伸びた。
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