フランスで大規模ストライキを引き起こしている年金改革を巡り、フィリップ首相は11日、労働組合との最大の争点となっている実質的な定年年齢の引き上げ案を撤回する意向を表明した。一部労組はこれを歓迎したものの、翌12日にはストが39日目に突入。同首相は政府が譲歩の姿勢を示したとして、労組に「責任を持って」ストを終了するよう求めている。BBC電子版などが伝えた。
フィリップ首相と労組は先に協議を行ったが、妥結には至らなかった。これを受け同首相は、労組からの反発が最も強い、実質的な定年年齢の引き上げ案の撤回を提案して歩み寄りの姿勢を見せた。国内最大労組で穏健派の民主労働総同盟(CFDT)はこれを労組の勝利と喜びを表明。公共交通機関の従業員などを代表する自治労働組合連合(UNSA)はこれを歓迎しながらも、ストを続行した。強硬路線のフランス労働総同盟(CGT)は、譲歩案が「カモフラージュ」にすぎないとし、年金改革を止める意気込みを改めて示した。CGTは、16日に大規模デモの実施を呼び掛けている。
フランスでは11日、5度目となる大規模デモが実施され、14万9,000人が参加。その後もストは続いているものの、13日にはフランス国鉄(SNCF)の高速鉄道TGVの運休が1割にとどまるなど、改善の兆しも見られる。
今回の年金改革案は、業種ごとに異なる42の年金制度を廃止して一本化するもの。CFDTはかねて一本化に理解を示していたが、定年年齢を62歳に維持しながらも、年金を満額受給するためには64歳まで働く必要があることが、実質的な定年年齢の引き上げになると強く反発。CGTは、年金改革自体の取り下げを求めている。[労務]
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