マクロン仏大統領は25日、中間所得層以下を対象とした総額50億ユーロ規模の所得減税を行うと発表した。これに向け、公共支出を削減するほか、法の抜け穴をふさぎ企業からの徴税を徹底するとしている。3カ月にわたり参加してきた国内各地の集会での議論を踏まえた措置で、反政府デモ「黄色いベスト」運動に象徴される国民の不満を和らげる狙い。
同大統領は昨年11月に始まった反政府デモを受け、国民の声を聞くため1~3月に国内各地の集会に参加。これらの集会では税負担に対する国民の憤りが浮き彫りとなっていた。フランスでは税収が国内総生産(GDP)に占める割合が46.2%と世界で最も高く、公共支出の対GDP比は56.8%と世界で2位につける。
マクロン大統領はこの日、ゴールデンタイムにテレビ放映された大統領官邸での演説で、反政府デモは社会的不平等への怒りと不満のはけ口だったと認めた上で、富裕税撤廃など国民の不満を買った自らの政策は、富裕層優遇ではなく経済刺激が目的と説明。その上で、今回の減税により中間所得層に恩恵を施す一方で、会計検査院による企業の租税回避の調査を行うことを約束した。このほか、受給額が月額2,000ユーロ以下の年金をインフレに連動させることも約束した。
ロイター通信によると、ルメール経済財務相は今回の減税で中間所得層を中心に1,500万世帯が恩恵を受けるとみている。ダルマナン公会計相によると、富裕層を除く国民の税負担が来年から10%軽減される見通しだという。ルメール経済財務相は減税額と同一規模の支出削減を行う方針を示している。一方、年金引き上げにより政府支出は来年以降に14億ユーロ増える見通し。マクロン大統領は昨年12月にも反政府デモを受けた措置として、最低賃金引き上げなど100億ユーロ規模の譲歩策を打ち出しており、今回の措置はこれに追加で実施される。[雇用]
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