欧州委員会は6日、仏重電大手アルストムと独総合電機大手シーメンスの鉄道事業の統合計画を却下した。欧州連合(EU)の競争法に基づき、鉄道信号システムおよび超高速列車の各市場で競争を阻害すると判断したため。これを受け、同計画を支持していた独仏政府は、競争法の見直しを求めている。
欧州委は、両社が示した譲歩案の内容は不十分だったとしている。ベステアー競争担当委員は、「両社の事業統合は、十分な是正措置を講じない限り、乗客の安全を守る信号システムや次世代の超高速列車の価格上昇につながる」と指摘。「両社が競争上の重大な懸念に対処しようとしなかったため、この統合を禁止した」と説明した。
これに対し、シーメンスのジョー・ケーザー最高経営責任者(CEO)は「欧州は企業の競争力向上を促すため、産業政策をただちに見直す必要がある」とコメント。「域内顧客の利益を守る一方で、欧州が中国や米国などの大国と対等に競争できなくなってはならない」としている。フランスのルメール経済財務相は、この決定について「政治的、経済的な過ちで、中国の経済と産業に恩恵をもたらすことになる」と批判。ドイツのアルトマイヤー経済相は、仏政府と共同でEU競争法の改定案を策定する方針を示している。
シーメンスとアルストムは2017年9月、シーメンスの鉄道部門であるシーメンス・モビリティーをアルストムに統合し、シーメンスが新会社の株式50%を取得することで合意。しかし、欧州委が昨年7月に調査を開始し、10月には異議告知書を送付したため、両社は信号システム事業と車両製品事業を売却する譲歩案を提出。さらに今年1月には、追加の譲歩を含む最終案を示していたが、同委が求める高速鉄道技術などの重要資産の追加売却には応じていなかった。[EU規制]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。