日立製作所は17日、英ウェールズで進めてきた新規原子力発電所の建設プロジェクトを凍結すると発表した。経済合理性の観点から判断したとしている。同社は同プロジェクトの資金を巡り昨年6月から英政府と協議を行ってきたが、合意に至らなかった。
日立の英原発建設事業ホライズン・ニュークリア・パワーは、ウェールズ北西岸に接するアングルシー島で、新原発「ウィルヴァ・ニューウィッド(Wylfa Newydd)」の建設を計画していた。だが安全基準の厳格化を受け、建設費が当初予算を大幅に上回る3兆円に膨れ上がったことから、日立は英政府に支援を要請。英政府は同原発からの電力買い取り保証額やプロジェクトへの直接出資の可能性について検討するとしていた。
日立は今回、「英政府からさまざまな支援や提案を受けた」とした上で、「資金調達モデルなどの諸条件について合意に至るには、想定以上の時間を要すると判断した」としている。一方、英国の民間企業・エネルギー・産業戦略省の広報官は「投資に見合う価値があり、英国の消費者や納税者にとって正しい取引」を目指し、「全関係者が懸命に交渉を行ったものの、現段階で計画を進めるための合意に到達できなかった」とコメントしている。
日立は同プロジェクトの凍結に伴い、2019年3月期に減損処理などで約3,000億円の損失を計上する。
英国では昨年11月、東芝も英イングランド北西部セラフィールド近郊ムーアサイド(Mooreside)で進めていた新規原発建設プロジェクトからの撤退を決定した。英政府はこのプロジェクトに対しても支援の可能性を示唆していたが、実現しなかった経緯がある。
東芝と日立の決定を受け、英政府の原発戦略の行方が危ぶまれている。同国で現在、建設が始まっている新規原発プロジェクトは、フランス電力公社(EDF)と中国広核集団(CGN)が出資するイングランド南西部サマセット州の「ヒンクリーポイント(Hinkley Point)C」のみ。英政府は今後、国内の電力需要を満たす上で、中国頼みでの原発戦略の維持か、石炭火力発電の継続、再生可能エネルギー開発の加速のいずれかの選択を迫られそうだ。[環境ニュース][日本企業の動向]
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