英下院(定数650)は25日夜、ロンドン・ヒースロー空港の第3滑走路の建設計画を415対119の賛成多数で可決した。長年の政治的議論にようやく終止符が打たれた。建設費約140億ポンドをかけて既存滑走路の北西に新滑走路を建設し、年間の発着便数を現在の48万便から74万便に拡大する計画。早ければ2021年の着工、2026年の運用開始が見込まれている。ただ、騒音などを理由に地元の地方自治体が司法審査を申し立てる構えを示しており、計画はさらにずれ込む可能性もある。
グレイリング運輸相は採決に先立ち、同計画の建設費を民間資金で賄うことを約束。また、地方経済に配慮し、新規発着枠の15%を国内便に充てる方針も示した。同相は今回の採決について「50年にわたる検討期間を経た歴史的投票であり、運輸政策としては現世代最大の決断となる」と強調した。
新滑走路の建設を巡っては2009年に当時の労働党政権が承認したものの、保守党と自由民主党の連立政権がこれを撤回。メイ首相も当時は計画に反対していたが、英国の欧州連合(EU)離脱が決定した後、英経済が世界に開かれていることを示すためとして支持に回った経緯がある。運輸省は2016年10月に建設を認める最終決定を下し、先に計画案が閣議承認されていた。
投票では、与党・保守党は議員に賛成を義務付けたものの8人の議員が造反。同計画に強く反対していたジョンソン外相はアフガニスタン訪問のため投票を棄権した。一方、最大野党・労働党はコービン党首がかねて計画に反対していたが、投票は議員の自主性に任せた。
グレイリング運輸相は議会での承認を受け、同計画の大枠を定めた国家政策声明を正式に公表する。ただ、現時点で空港周辺の4つの地方自治体が司法審査を申し立てる意向を示しており、ロンドンのカーン市長や環境保護団体グリーンピースもこの動きを支持している。司法審査の結果は10月に公表される見通し。計画が却下された場合、2019年前半に再度の意見公募が行われることになる。ヒースロー空港を運営するヒースロー(旧BAA)は、早ければ2019年後半に建設計画の承認申請を行いたいとしている。
一方、航空各社はかねて、拡張工事のコストが空港使用料に反映されることを懸念している。英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とスペインのイベリア航空を運営するインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)は、「運輸相は空港使用料を現行水準で維持する意向だが、国家政策声明にそう明記しない限り、ヒースローはこれを無視するだろう」とコメント。「3つの滑走路を備えたヒースロー空港は、世界で最も高くつくハブ空港となり、英経済と消費者は貪欲な運営会社の犠牲になる」としている。[環境ニュース]
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