欧州委員会は20日、米国が欧州連合(EU)からの鉄鋼・アルミニウム輸入に新たな関税を課したことを受け、22日に報復関税の適用を開始すると発表した。総額28億ユーロ相当の米国からの輸入品に25%の関税を課す。
報復関税の対象には、鉄鋼・アルミニウムに加え、米やオレンジジュース、ウイスキー、たばこ、モーターボート、ステンレス製品、建設・製造用の金属製品など幅広い米国産品が含まれている。
欧州委のマルムストローム貿易担当委員は「EUはこうした立場に立つことを望んでいなかったが、鉄鋼・アルミニウムに関税を課すという米国の一方的で不当な決定を受け、他に選択肢がなかった」とコメント。「われわれの対応は慎重かつ相応で、WTOのルールに完全に準拠している」とあらためて強調した。
トランプ米大統領は5月31日、EUからの鉄鋼およびアルミニウム輸入に新関税を課すと発表。6月1日からそれぞれ25%、10%の税率が適用されている。欧州委は、64億ユーロ相当のEU製品がこの関税の対象になるとみている。世界貿易機関(WTO)のルールでは、これと同等の報復関税の適用が認められている。このため、欧州委はまず最大28億ユーロ相当の米国産品に関税をかけた上で、2021年3月にまだ問題が解決していない場合や、WTOが米国の関税を違法と判断した時点で、残りの36億ユーロ相当に関税を課す方針。
なお、欧州委は米国の鉄鋼・アルミニウム関税適用に対し、三つの対応策を進めており、報復関税はその一つ。このほか、6月1日にはWTOに米国を提訴している。また、米国が3月に鉄鋼・アルミニウム関税の適用を開始した中国などから、米国向け製品がEU市場に流入しているとみて、暫定的なセーフガード(緊急輸入制限)措置を取る準備も進めている。欧州委はこれについて3月26日に調査に着手しており、WTOのルールではEUの鉄鋼・アルミ産業が輸入増により深刻な損失を被っているとの予備的な調査結果が出れば、最長200日間にわたり暫定的なセーフガード措置をとることが認められる。[EU規制]
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