欧州委員会は29日、2021~2027年の次期欧州連合(EU)予算で、イタリアなど南欧諸国向けの給付を増額する方針を明らかにした。金融危機の打撃や難民流入の影響に配慮した格好。折しもイタリアでは、早ければ9月にも再選挙が行われ、EU懐疑派がさらに躍進する可能性が高まっており、EUは警戒を募らせている。
欧州委は5月上旬に発表した次期EU予算案の中で、加盟国間の格差解消と低所得国の支援を目的とする結束基金に3,730億ユーロの予算を割り当てていた。同委は今回、この結束基金からの加盟各国への交付金を公表するとともに、結束基金のあり方を見直す方針を発表。この中で、交付額の算定基準に失業率の高さや移民・難民の受け入れ努力を盛り込むことを提案した。
この結果、金融危機の影響が長引き高失業率にあえぐ中、多数の移民・難民を受け入れているギリシャやイタリア、スペインへの交付額は従来よりも拡大。一方、経済が早期に回復し失業率が比較的低いポーランドやハンガリー、チェコなど中東欧諸国は、交付金が減額されている。
イタリアでは第1党で反体制派政党の「五つ星運動」と第2党で中道右派の同盟(旧北部同盟)が推したEU懐疑派の経済財務相候補をマッタレッラ大統領が拒否したため、両党が連立による組閣を断念。同大統領は国際通貨基金(IMF)元高官のコッタレッリ氏を暫定首相に指名し、実務者から成るテクノクラート内閣の樹立を要請した。しかし、暫定政権は短命に終わるとの見方が強く、今秋にも再選挙が実施される可能性が浮上している。世論調査機関SWGの最新の世論調査では、五つ星運動と同盟の支持率が合わせて57%と前回からさらに増え、議会で過半数議席を獲得する見込みとなっている。
イタリアの政治危機を巡る投資家の不安が高まる中、同国の株式相場は2.7%下落。また、イタリア国債の売りが進み、利回りが過去26年で最大の上昇を示すなど、同国の資金調達コストの上昇が懸念されている。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。