イタリアの第1党で反体制派政党の「五つ星運動」と第2党で中道右派の同盟(旧北部同盟)が推したジュゼッペ・コンテ首相候補は27日、組閣を断念した。マッタレッラ大統領が閣僚人事を巡り、強硬な欧州連合(EU)懐疑派の経済財務相候補の指名を拒否したため。同大統領は国際通貨基金(IMF)元高官のカルロ・コッタレッリ氏を暫定首相に指名し組閣を要請したが、五つ星運動のディマイオ党首は同大統領の弾劾を議会に要求するなど政治的混迷を極めており、再選挙の可能性が高まっている。BBC電子版などが伝えた。
コンテ氏は先にマッタレッラ大統領と会談し、五つ星運動と同盟が作成した閣僚人事を提示。同大統領は、EU懐疑派のエコノミストとして知られるパオロ・サボナ氏を経済財務相に指名することについてのみ反対する意向を示した。サボナ氏はかねて、イタリアのユーロ圏入りを「歴史的な過ち」と批判するなど強硬な反ユーロの立場で知られており、同大統領はイタリア経済に不安定要素をもたらすと危険視した。コンテ氏はこれを受け、「組閣の使命を断念する」と宣言。イタリアの大統領は政治的に中立とされており、閣僚人事に口を挟むのは異例の事態だ。
ディマイオ党首と同盟のサルビーニ党首は、マッタレッラ大統領の決定は権限を逸脱しているなどと非難。同大統領の判断には、ドイツや格付け機関、金融業界のロビー活動による横やりが入ったと指摘している。なお、ディマイオ党首は憲法第90条に基づき議会に大統領の弾劾を要求。議会で過半数の賛成を得れば可決され、その後は憲法裁判所が弾劾を実施するかを判断する。
マッタレッラ大統領は28日にコッタレッリ氏と会談し、選挙を経ていない実務者によるテクノクラート内閣の樹立を要請した。しかし、暫定政権は長続きしないとの見方が強く、今秋にも再選挙が実施される可能性がにわかに浮上している。アナリストは、同大統領による今回の決定がイタリアにおける反ユーロ感情を過熱させ、再選挙が実施された場合、五つ星運動と同盟がさらに票を伸ばす可能性があると指摘している。
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