欧州委員会は3日発表した春季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比2.3%拡大するとの見方を示した。前回2月時点の冬季予測を据え置いた形だが、米中間の貿易摩擦が世界経済に悪影響を及ぼす可能性に言及。また欧州では、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の行方が引き続き下振れリスクになると警告している。
来年の成長率見通しは2%と、こちらも前回の見通しを維持。金融緩和策の段階的引き上げや世界貿易の鈍化などが要因になるとみる。英国を除くEU加盟27カ国のGDPは、2018年は2.5%との予想を据え置き、2019年は2.2%へと0.1ポイント上方修正した。EU加盟28カ国のGDPは、今年は2.3%増、来年は2%増を見込む。
インフレ率については、過去数カ月はやや減速したが、エネルギーや生鮮食品を除くコアインフレ率は緩やかに上昇していると指摘。今年のユーロ圏のインフレ率は1.5%、来年には1.6%に加速するとし、冬季予測を据え置いた。EU28カ国のインフレ率については、今年は1.7%と2月予測から0.2ポイント下方修正し、来年は1.8%との予想を維持した。
失業率はユーロ圏とEUで共に金融危機前の水準に改善したとし、ユーロ圏は今年に8.4%、来年には7.9%に低下すると予想。EU28カ国は今年は7.1%、来年は6.7%に改善するとみる。
今年の成長率予測を国別に見ると、ドイツは2.3%、フランスは2%、イタリアは1.5%といずれも2月の予想を据え置いた。オランダは3%と0.1ポイント上方修正された。スペインは0.3ポイント引き上げられ、2.9%と予想。ユーロ圏外の英国は、1.5%と0.1ポイント上方修正されたものの、来年は1.2%に減速するとの見方を示している。
欧州委のピエール・モスコビシ経済・財務・税制・関税担当委員は「欧州経済は引き続き大きく成長しており、これが過去10年で最も低い失業率につながった」とコメント。投資の伸びや公的債務の改善は喜ばしいとする一方で、明るい見通しへの最大のリスクは保護主義であるとし、「これを新たな常態にしてはいけない」と警鐘を鳴らした。[労務][EU規制]
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